うなぎ

今村昌平「うなぎ」をDVDで。間が気持ちいい作品でした。
妻殺しの男と自殺未遂の女が知らない土地に流れてきて、もう一度生き始める。

赤い色に象徴される女性の狂気と、どことなく漂う男性たちの幼児性がポイントになりながらも、それを囲む田舎町の人々は何も詮索せず善意と優しさがある、いい土地と人に描かれている。
そんな場所があれば良いのに。これはおとぎ話なんだと思う。間が人を癒す効能を持つこともあると、この映画を観て思いました。

赤い色は妻を何度も刺して出た血の色と、気の違えた母親が纏うカルメンの衣装と、お弁当を包む風呂敷の色。
ちょっと安直かもだけれど、愛も真心も紙一重なのかと、少し怖くてけれどそれくらいギリギリなものなのだとも思います。何事も安穏としたのがいいけれど。

ほんとうに、こんな場所があればいいのに。見方間違えているかもしれないけれど、物語に見られる善意に安らぎました。
重いのかと思って避けていたけれど、全然全然。人の情念を内包しながら淡々として温かく語られる映画です。