パリ旅行2014.9 ⑤

◆9月11日◆

この日、やっとポンピドゥーセンターへ。
目当てのマチス「王の悲しみ」は展示無し。がっかり。

藤田嗣治の「カフェにて」を見られて、恥ずかしながらちょっと涙が出た。誰も居なかったら声をあげて泣いたと思う。。
外国にいるって相乗効果もあって昂まり易いんだと思うけれど。

 私、藤田は20年代が好き。だと思っていたけれど、40年代後半のこの作品と20年代の作品が隣り合わせになって飾られていて比較すると、人目を引くも作品の充実ぶりも圧倒的に「カフェにて」だった。

これが描かれた頃、藤田は最後の渡仏、二度と日本に帰らない、移住の為にニューヨークに滞在していました。フランスからの入国許可がなかなか降りず不安で心許ない日々だったそうです。
だから、アメリカにいながらパリのカフェを描いたんです。心は既にパリに飛んでいました。この時期は傑作が多く生まれているように思います。傑作の「夢」もこの頃の苦悩を描いています。
やっぱり苦しみが深い程、芸術に深くのめり込むものなのかと考えてしまう。
なんて滑らかなマチエール。本当にこんな絵肌を作って細部まで線をひいたのかと、近くに寄るとゾクゾクした。執念すら感じる。
この女性、他の作品にも登場して占い師に未来をみて貰っている。悩んでいるんだな。手紙の内容はなんだろう。
顔を見ると物憂げに伏し目がちな向かって左とこちらを見る右。印刷で見る分には大して気に留めず、よくある技法だよ。ぐらいに思っていたんだけど、明らかにアシンメトリーな視線には揺れ動く不安定な心が現れている。
不安定で、心はここにない。当時の藤田そのもの。
額も藤田手製の物で大変洒落ていました。

藤田嗣治は日本では大スターですが、フランスではエコールドパリを代表する作家の一人に過ぎないようです。
彼に関する本の扱いは少なくともポンピドゥーにはありません。そりゃマチスが看板。カンディンスキーも有数のコレクションの為か大々的に扱われています。
けれど確かに当時活躍し、人気を得て認められた唯一の日本人画家です。
日本人画家でこの人だけが、言い方はアレですが、心から血を流して戦い続けた。と私は思う。自分の人生を生き切ろうと強い意志と誇りを持って生きた。

痛みが美しいものになって、ここにある。思いの丈はここに絵となって今も存在している。そんな事実が伝わって来て、私は胸が詰まるようで、涙にするしか無かったように今は思います。

ポンピドゥーについてはきっとまだ描くけど、めっちゃ長くなるからここまでで。
シャガールが凄く良かった。もう素晴らしい。幸せを有難う。って思ったよ。

ポンピドゥーセンターのご案内
http://jams-parisfrance.com/info/centrenationaldartgeorgespompidou/